「お、動いた。」
亮は私のお腹に手を当てながら言う。
「お、また動いたぞ?こいつ元気いいな。」
「こんなに元気がいいんだもん。男の子かもしれないね。そうしたら将来はサッカー選手かな〜?」
「え?今日訊きに行ったんじゃないのか?」
そう言いながら亮は不思議そうに私を見る。
「うん、訊こうと思ったんだけどさ。やっぱり訊かないほうが楽しみが増えるかと思って。」
「そうだな。俺は別に男でも女でも構わねぇし。」
「女の子だったら亮、親バカになりそう。」
「そんな事ねぇよ。…たぶん。」
亮はばつが悪そうに頬をかく。
普段はかっこいい印象を持たれがちな亮だけどこんな時はかわいいと思う。
そんなこと言ったら怒られそうだけど。
「ははは〜、全然説得力ないよ。」
「そう言うけどな、だって男の子だったら絶対に甘い親になるぞ!」
「そんな事ないと思うけど…」
「けど?」
「亮似の男の子だったら溺愛しちゃうかも…。」
「…それってすげぇ、複雑。喜ぶべきなのか?」
「だってさぁ、ちび亮だよ?亮単品でも十分なのにさ。それに亮がちび亮にサッカー教えてたらすごく素敵じゃない?」
「単品って…。意味分かんねぇし。それに俺そっくりのがもう一人居たって気持ち悪いだけだろ、それ。」
「そうかな?考えてみなよ?藤代君がちび藤代君にサッカー教えてたら微笑ましいでしょ?」
「…うぜぇ。」
「もう、ひどいなぁ。」
私が少し拗ねたふりをしていたら亮が口を開いた。
「でも、がそっくりの女の子に料理教えてたり、帰って来た時に二人でお帰りって出迎えてくれたりしたらすげえ嬉しいかも…。」
亮のほうを見ると目があった。
そして二人で微笑みあう。
「要するにさ…。」
「お互いの事が大好きだって事だろ?」
「ふふ、そうだね。…亮、大好きだよ?」
「あぁ…、二人でがんばって育てて行こうな?」
お腹の中に居る赤ちゃん、聞こえていますか?
パパもママもあなたが生まれてくるのをすごく楽しみにしているよ?
だから、元気に生まれて来てね?