ポタ…
ポタ、ポタ…
濡れた指先から滴り落ちる滴を見るのが好きだった。
「、いつまでお風呂入ってるの。いい加減あがらないとのぼせるよ。」
ドアの向こうから音がする。
誰かが私に話しかけているのだろうか。
でも、その声すら私を現実に引き戻すには至らなかった。
「…開けるからね。」
その音が聞こえると同時にドアから英士の顔が見えた。
あぁ、やっぱりあれは私に話掛ける声だったのか。
今は湯船につかっているし、入浴剤によって英士には何も見えていないはずだ。
それでも、女の子がお風呂に入っているところを覗くのは如何なものだろうか。
「英士、私、お風呂入ってるんだけど。」
「開けるって言ったけど?」
「へぇ…。まぁ、今更気にしないけどね。」
「それも女の子としてどうかと思うよ。」
「うん…。」
「ねぇ…楽しい?」
「楽しいよ?」
何も言わなくても伝わる。
そんな関係が心地いい。
「好きなのはわかるけどさ、いい加減あがらないとまた逆上せるよ。」
「大丈夫。」
「嘘つき。前に逆上せて動けなくなったのを助けてあげたのは誰だと思ってるの?」
「うん…英士…。」
「ちゃんと上がってくるんだよ。」
「うん。」
少しあきれながら英士は出て行った。
英士が心配してくれているのはわかっている。
今までこうしていて数えきれないほど逆上せているから。
それでも、私はこの時間をやめる事はできない。
美しい水滴と、優しい英士の瞳。
あぁ…なんて心地よい時間。
ポタ…
ポタ、ポタ…
ポタン…
+++あとがき+++
指先から落ちる水滴を見るのが好きなんです。
自分が心落ち着くそんな時間を伝えられれば…。
夢らしくないお話ですが、自分的には満足しております。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
しつれいしました。
2009/1/31