「そんなに英士が好きなら、あいつの所にいけばいいだろ。」
そう言う一馬に何も言い返せなかった。
はにかむように笑う一馬の顔が何よりも好きなのに。
私のせいで一馬が苦しんでいる。
誤解だよ、とは言えなかった。
一馬が何でこんな顔をしているのか。
その理由は自分が一番分かっているから。
「俺は、英士みたいに器用じゃないし、お前の気持ちをわかってやれないかもしれない。」
一馬の目からそっと涙が伝った。
それを隠すように、私に背を向ける。
「それでも…お前と、と、一緒にいたいんだよ。」
なんて嬉しい言葉をくれるのだろう。
こんな時に不謹慎かもしれないけれど。
いつもは不器用で、照れ屋で、愛の言葉なんて全くくれないのにね。
「一馬…。」
「頼む…俺の隣にいてくれよ…。」
あぁ、私はこんなに孤独な子を独りにしようとしてたのか。
震える背中にそっと触れる。
そしてそのまま抱きしめた。
「大丈夫、私は一馬の隣にいるから…。」
そんなたった一言で笑顔になる一馬。
この子はなんて単純なんだろう。
人の言葉を疑わないで。
そんなんじゃ、いつか誰かに傷つけられてしまうだろう。
いや、もう、私に傷つけられているのかもしれない。
傷つけられてもなお、私を手放そうとしない一馬はなんと愚かなのだろう。
愚か者の恋
一馬を傷つけることで愛を確認する自分はさらに愚かなことだろう。
本当は、一馬から離れられるわけ、ないのにね。
+++あとがき+++
この作品は結末を2パターン考えてあって悩んだ末にこれになりました。
いつかこっそりかわっているかもしれません。
今までは、この作品のような考えってあまり好きではなかったのですよ。
なんでそんな、相手を試すような事をするのか。
でも、最近は少しわかるような気がします。
どんなに好きって言われても気持の大きさなんてわからないですもんね。
それなら、別れたくないって言われた方が、どれだけ自分がその人にとって必要なのか分かる…。
そう言う考えもありなのかなぁって。
そう考えると街中でいちゃついてる見るに堪えないバカップルもそれが彼らなりの確認する方法なのかなぁって思えました。
あんまり、邪険にしちゃダメですね。
このまま語り続けてると小説より長くなりそうなので、この辺で。
ここまで読んでくださり本当にありがとうございました。
2008/12/27